自我偈の現代語 意訳 ~日蓮正宗の信仰を基として~
妙法蓮華経 如来寿量品(自我偈)
〔法華経の教えのうち 永遠の仏の寿命を説く品(自我の詩)〕
自我得仏来 〔私(仏)が悟りを得てから今日まで〕
所経諸劫数 〔経過した年月は〕
無量百千万 〔計り知れないほどで〕
億載阿僧祇 〔億阿僧祇劫という無限の年月です〕
常説法教化 〔私(仏)は成仏して以来、常にこの法華経を説き〕
無数億衆生 〔数え切れないほどの人々を教化し〕
令入於仏道 〔仏の真実の道に導いてきました〕
爾来無量劫 〔それらの無数の人を教え導いてきた年月も計り知れないほ
ど長遠です〕 。
為度衆生故 〔人々を救うため、私(仏)は〕
方便現涅槃 〔これまで何度も、自分が死ぬ姿(入涅槃)を人々に見せて
きました〕 。
而実不滅度 〔しかしこれは方便であり、私(仏)は実際には死んだので
はなく〕
常住此説法 〔この世界にいて、常に法華経を説法し、いろいろな時代の
人々を導いていたのです〕
我常住於此 〔私(仏)は、常にこの世界に、あなた方と共に住していま
すが〕
以諸神通力 〔さまざまな神通力をつかって〕
令顚倒衆生 〔心が顚倒して法華経を信じられず、迷っている謗法の人々
には〕
雖近而不見 〔近くにいる私(仏)の姿が見えないようにします〕
衆見我滅度 〔(なぜなら)謗法の人々は、私(仏)が仮に死ぬ姿を見
て〕
広供養舎利 〔大々的に私(仏)の遺骨を祀って供養し〕
咸皆壊恋慕 〔(もう会えない)私(仏)に対して、せめて仏が遺された
法華経を信受したい、と慕うようになり〕
而生渇仰心 〔渇仰心を起こさせることができるからです〕
衆生既信伏 〔すでに法華経を信じ、法華経に従う人には〕
質直意柔軟 〔南無妙法蓮華経の功徳によって、素直で柔和な心が生まれ
ます〕 。
一心欲見仏 〔ただひたすら、「仏の御姿を見たい」「法華経の教えをも
っと知りたい」等と願って〕
不自惜身命 〔自分の身命さえ惜しむことがなくなります〕
時我及衆僧 〔人々が、こうした立派な信心を持てた時〕
倶出霊鷲山 〔私(仏)は、仏弟子とともに(仏の境界である)霊鷲山に
姿を現わします〕
我時語衆生 〔そして私は人々に語りかけます〕
常在此不滅 〔「私は常に、あなた方と共にこの現実世界にいるのであ
り、死んで消え去った訳ではありません」と
以方便力故 〔方便の力を自由自在に使って〕
現有滅不滅 〔私自身の肉体が滅し、死んでいく姿を見せたり、ある時に
は、仏としての尊い寿命は永遠不滅であることを示してき
ました〕
。
余国有衆生 〔この世界だけでなく、他の世界でも同時に〕
恭敬信楽者 〔法華経を敬い、聞きたいと願う信心深い人がいれば〕
我復於彼中 〔私(仏)は、その人の所へ行って〕
為説無上法 〔この上ない最高の法華経を説くのです〕
汝等不聞此 〔しかし、あなた方の中には、こうした仏の言葉に耳を傾け
ようともせず〕
但謂我滅度 〔私(仏)はすでに死んでしまったと思い込む人もいるでし
ょう〕
我見諸衆生 〔私(仏)が、この世に生きる様々な人の人生を見渡すとこ
ろによれば〕
没在於苦海 〔みな誰もが、苦悩の海に沈み、もがき苦しんでいることが
分かります〕
故不為現身 〔だから私(仏)は、あえて姿を現わさず〕
令其生渇仰 〔人々に、私(仏)を求めさせ、私が残した法華経を信じた
い、との信心を起こさせるのです〕
因其心恋慕 〔そして、人々が、私(仏)を慕う心を起こしたとき〕
乃出為説法 〔私はいつでもその人の前に出現し、法華経を説法します〕
神通力如是 〔私(仏)に具わる不思議な神通力とは、このようなもので
す〕
於阿僧祇劫 〔阿僧祇劫(久遠)という、永遠の昔から〕
常在霊鷲山 〔私(仏)は、成仏の境界である霊鷲山に居ます〕
乃余諸住処 〔あるいは、他の世界に赴いては、いつでもどこででも法華
経を説法しているのです〕
衆生見劫尽 〔この世界が終焉を迎え〕
大火所焼時 〔大火に焼き尽くされる、その時が来ても〕
我此土安穏 〔私が法華経を説く環境(仏国土)は安らかで〕
天人常充満 〔天人や福徳に包まれた幸せな人で溢れています〕
園林諸堂閣 〔仏とともに過ごすその環境(妙法を唱える人の世界)に
は、美しい花園や森林が茂り、そこにそびえる仏塔は〕
種種宝荘厳 〔さまざまな宝石で荘厳され美しく輝いています〕
宝樹多華果 〔宝石のような花や実をつけた木が多く繁る〕
衆生所遊楽 〔法華経の信心の世界では、人々は楽しくその境界を満喫し
ています〕
諸天撃天鼓 〔諸天善神は、天の太鼓を撃ち〕
常作衆伎楽 〔常に、伎楽の美しい妙音を奏で〕
雨曼陀羅華 〔曼陀羅華という美しい花が雨のように降り〕
散仏及大衆 〔仏や、仏と心を合わせ南無妙法蓮華経を唱える人々の頭上
に注がれます〕
我浄土不毀 〔このように、私(仏)の浄土(法華経の仏国土)は、どん
な時もけっして破壊されることはありません〕
而衆見焼尽 〔しかし、人々は、そうした成仏の境界を信じられず、この
世の終わりでは、たとえ仏であっても、劫火に焼き尽くさ
れるに違いない、と妄想します〕
憂怖諸苦悩 〔このように、法華経を信ぜず、悩み迷う謗法の人は〕
如是悉充満 〔この世界が、不安や恐怖で満ちあふれていると思い、絶望
しています〕
是諸罪衆生 〔こうして、謗法罪を重ねる人々は〕
以悪業因縁 〔悪いおこないや妄想、謗法という悪業の因縁によって〕
過阿僧祇劫 〔阿僧祇劫という永遠の年月が過ぎても〕
不聞三宝名 〔真実の仏(日蓮大聖人)、法華経(御本尊)、そして正法
を説く僧の、仏・法・僧の三宝に出会うこともできなけれ
ば、その名前さえ耳にすることができない、悲しい境界に
堕ちていきます〕 諸有修功徳 〔それに対して、法華経を信じ種々の功徳を積んで〕
柔和質直者 〔心が素直で柔和となった人は〕
則皆見我身 〔ただちに、眼前にいる私(仏)の姿(御本尊)を見る(信
ずる)ことができますし〕
在此而説法 〔素直に妙法の教えを聞くこともできます〕
或時為此衆 〔そのような人に対しては〕
説仏壽無量 〔ある時は、本仏の寿命は永遠不滅であると教えます〕
久乃見仏者 〔また、長い年月を経て、ようやく素直な信 心を持てた人に
は〕
為説仏難値 〔真実の仏(ご本仏・日蓮大聖人)に出会えるのは、とても
困難で稀なことであることを教えます〕
我智力如是 〔私(仏)の智慧は、このように深く広いものであり〕
慧光照無量 〔仏の智慧の光は、どこまでも届き、あらゆる人の心を明る
く照らし尽くし、届かない所はありません〕
寿命無数劫 〔私の仏としての寿命が永遠なのは〕
久修業所得 〔私が久遠という遠い昔、法華経(南無妙法蓮華経)を修行
し、即座に悟りの功徳を得たからです〕
汝等有智者 〔あなた方のように信心の智慧を持てた人は〕
勿於此生疑 〔このこと(南無妙法蓮華経に永遠不滅の幸福境界を確立する
功徳がある)に疑いを生じてはなりません〕
当断令永尽 〔もし疑いの心が生じたら、その迷いを断ち切るよう努めな
さい〕
仏語実不虚 〔ここで語った私(仏)の言葉は真実であり、少しのウソ、
偽りもありません〕
如医善方便 〔(寿量品の長行で語ったように)医者が方便を使い〕
為治狂子故 〔毒を飲んで正気を失った子供に薬を飲ませて救うため〕
実在而言死 〔現実には死んではいないのに〕
無能説虚妄 〔遣いの者に「父は死んだ」と告げさせたことが、悪いウソ
ではなかったように〕
我亦為世父 〔私(仏)もまた、この世界のあらゆる人々の親として〕
救諸苦患者 〔人生に苦しむあなた方を救おうとしているのです〕
為凡夫顚倒 〔しかし、世の多くの人々は、命の根源のところで迷いを持
っているために〕
実在而言滅 〔その迷いから覚醒させるため、私(仏)はいつも人々の眼
前にいるけれども、敢えて、死んだように見せかける方便
を用いているのです〕
以常見我故 〔なぜなら、あなた方は、いつでも私(仏)に会えるとなれ
ば〕 、
而生憍恣心 〔つい自分勝手な心を起こし〕
放逸著五欲 〔「今、慌てて仏道修行を行なわなくても、いつか困った時
にやれば、いつでも仏様が助けてくれるだろう」との甘い
考えを持ち、五欲に溺れ、やりたい放題となり〕
堕於悪道中 〔地獄・餓鬼・畜生といった三悪道の世界に堕落してしまう
からです〕
我常知衆生 〔私(仏)は、いつでもあなた方を見ています〕
行道不行道 〔仏道修行を行なう人、行なわない人をよく知っています〕
随応所可度 〔それを見極め、人々の信心状態に応じて〕
為説種種法 〔それぞれの人に適した形で導いているのです〕
毎自作是念 〔私(仏)はいつでも、考えています〕
以何令衆生 〔「どのようにしたら、あなた方を〕
得入無上道 〔最高の教え、すなわち南無妙法蓮華経に導き入れ〕
速成就仏身 〔ただちに、幸福境界である成仏の功徳を成就させることが
できるだろうか」ということを〕