仏道修行を志す者は、まず第一に父母の恩に報いよ
父母からいただいた恩に対して、恩返しをしなさいというのは、我々がまず生まれてくることができたのは、父母の赤白二渧が和合して我が身となったからである。そして、子が母の胎内に宿る日数は二百七十日、九ヶ月の間であり、その間、母は三十七回も死ぬような苦しみを経験する。さらには、産み落とす時は耐えがたいと思い、息は苦しく、頭より出る湯気は梵天に昇るほどである。
そこまでして苦労して産み落とした子を、今度は母は我が肉身の一部である飲を与えて育てる。子供が飲む乳の量は一百八十石もの量であり、三年間というもの、生まれてきた子供は、父母の膝の上で安心して遊んで成長していくのである。
よって、仏教を信ずるようになったならば、まず、真っ先にこうした父母の恩に対して、心から恩返しをしていくべきである。父の恩の高い事は須弥山もなお低いほどであり、母の恩の深い事は大海さえもかえって浅いほどである。よくよく心して父母には恩返しをしていきなさい。
[上野殿御消息 平成新編御書922ページ 趣意]