幸福の科学
◇悪霊の仕業だった?
数年前、子供向けアニメに「日常にあふれる困ったことは、すべて妖怪の仕業だった」という内容の人気作品がありましたが、このアニメに似たことと大して変わらない主張をしているのが「幸福の科学」です。
教祖の大川隆法氏(故人)は、『秘密の法』という著書の中で、「半分以上の人は、悪霊の影響を受けている」(幸福の科学公式ホームページ)と主張します。そしてその説明として、
「キャパシティーの器を越えたためにできなくなって霊障になるというパターンは、特に社会人になり、仕事をし始めてからはとても多いのです。たいてい、『悩み』『苦しみ』『迷い』等が霊障のもとになっていて、その悩みや迷いで、死んで迷っている地獄霊や動物霊など、いろいろなものを引きつけてくることがあります」(同)
というのです。つまり、自分の容量や能力を超えた仕事などで悩み始めると憑依(ひょうい)されやすくなり、やがて死んで迷っている地獄霊や動物霊に取り憑かれると教えるのです。何だか、こんなことを言われると、恐ろしくて、そうそう無理もできなくなってしまうのではないでしょうか。
◇そもそも、霊とは
「悪霊」なるものは本当に存在するのでしょうか。
人は死んだら肉体は滅びるが、目に見えない霊魂が肉体を抜け出してどこかに存在する、という考え方が古来よりありました。そうしたことから、幽霊や祟りが恐怖の対象となったり、一方では、霊が神聖視されたりしてきたのも事実です。
しかし、生命の不可思議な現象は、唯心論対唯物論、あるいは個体的存在とし霊魂が存在するといった考え方では、到底その本質を正しくとらえることは不可能なのです。
仏教では、我々の肉体は一生が終わった時に分解されて宇宙の物質へ戻り、過去世の業因をもとに再び、縁によって宇宙の物質をもって肉体が形成されていくと説きます。同様に、宇宙の生命に冥伏(みょうぶく)した死後の生命は、過去世の業因によって十界のそれぞれの業を感じて苦楽を得ていくのです。
また、特に強い怨念(おんねん)や苦しみ、執着などは、生きている人間に感応(かんのう)し、稀に言葉が聞こえたり物が見えるといった作用を感じる人もいるようです。しかしこれらは、けっして霊魂や悪霊の仕業ではなく、どこまでも感応によって起こるものとされます。
以上のことから、悪霊の憑依などなく、生も死も一つの生命における変化に過ぎないことを、まず理解すべきです。
◇コロナ禍も悪霊の仕業?
ところが幸福の科学では、「ウィルス感染は、実は“憑依”の一種」(同)と主張しています。つまり、「霊的視点で眺めると、ウィルス感染は『悪霊の依憑』と同じです。たとえばインフルエンザは、ウィルスに『虫の不成仏霊の集団』が憑依したもの」(同)というのです。なんと彼等は、ウイルスの感染は「虫の不成仏霊の集団」に憑依されて起こるというのです。
そして、コロナウイルスや不成仏霊から身を守る方法として、教祖の大川氏自身が天上界から直接メロディを隆ろし作詞・作曲したとする「コロナウイルス撃退曲」や「不成仏霊撃退祈願曲」などを聞くよう勧めています。
◇疫病調伏の真の方途
日蓮大聖人は今日のような疫病の起こる原因を『日女御前御返事』の中で、
「今日本国の疫病は総罰なり。定んで聖人の国にあるをあだむか」(御書1233㌻)
と、正法を誹謗する故の一国謗法の総罰の現証であることを御教示されている。
この総罰を克服する方途について同抄に
「されば身をすてゝ信ぜん人々は、やまぬへんもあるべし。又やむともたすかるへんもあるべし」(御書1231㌻)
と御教示である。
正法のもとに、強い確信を持ち、不自惜身命の折伏に励むことにより病魔に打ち勝つことができる。この道理に、深く信をいたすべきである。
※上記文章は、『大白法』(令和3年6月16日発行)に掲載された文章を、編者が添削したものです。