宗教の“二世問題”について
ここでは、マスコミなどで連日報道されている、いわゆる宗教の“二世問題”について、みなさんと一緒に考えたいと思います。
そもそものきっかけは、安倍元総理大臣に対する襲撃事件です。
2022年7月8日、安倍元総理大臣が襲撃(しゅうげき)されました。犯人として逮捕された男は、警察の取り調べに対し、「母親が旧統一教会に入会し、多額のお金を振り込んだ影響で破産(はさん)したことがそもそもの元凶(げんきよう)」「家庭生活がめちゃくちゃになり、(同団体を)絶対成敗(せいばい)しないといけないと思った」(読売新聞 2022年7月13日付)と供述。そして、「安倍元首相が教団のビデオに登場したのを見て、安倍元首相の殺害を強く決意した」(毎日新聞 2022年7月14日付記事の趣旨)と供述したとされています。
もちろん、いかなる理由があるにせよ、人の命を奪(うば)うことは、けっして許されることではありません。この大前提の上で、以下にお話しします。
世界平和統一家庭連合(以後、旧統一教会とします)では、高価な宗教的物品の購入が盛んに推奨(すいしよう)されるといいます。そこで、自分の意思によるものとはいえ、無分別にそれらを購入し続けた結果、家庭の経済が破綻(はたん)し、子供の給食代や学費が払えないなどの問題が生ずるようになりました。
他の宗教でも、たとえば昭和の頃、神道系の新興宗教に入信した人が「財産は不幸の原因である。貧乏(びんぼう)になれ」との教えを信じ、家屋敷などの財産をすべて教団に寄付してしまった。その結果、子供たちが大変な苦労をすることになった、という話をよく耳にしました。
また、虐待(ぎゃくたい)についていえば、3~40年ほど前、キリスト教系の新興宗教が、教義上の理由から、子供への輸血を認めなかったことが社会問題になりました。さらに、両親がこの教団の熱心な信者だったという青年がマスコミの取材に対し、「2~3歳の頃から、親に手製の鞭(むち)で叩(たた)かれた」との苦しみを訴えています。
こうした、異常ともいえる事例を見聞きするうち、世間には「触らぬ神に祟(たた)り無し」とか、「宗教はアヘンである」などと言って、宗教自体を倦厭(けんえん)する風潮(ふうちよう)が広まった、といっても過言ではありません。
しかし、この「二世問題」を考えるとき、私たちがまず、冷静に考えなければならないことは、親から子へと信仰を伝えること、それ自体は、けっして悪いことではない、ということです。つまり、「財産をすべて教団に納めよ」とか「子供を鞭で叩く」などという行動を推奨する宗教の存在、またそういう宗教の教え自体が、そもそも間違っているんだ、ということ。このことをよく認識しなければなりません。
あるいは、もっと身近な例を挙げてみましょう。
私たちが、日蓮正宗の人に折伏されて入信を決意し、御本尊を自宅に安置しようと思ったら、親から「うちは先祖代々、禅宗だから」とか、「昔から、うちは念仏なんだから、南無妙法蓮華経に改宗するなら勘当(かんどう)する」
などと言われてしまった、と。
ところが、実家の両親や、親戚の叔父さん達は、おそらく禅宗や念仏の教えを、熱心に信じている訳ではないのです。また、仏教についても、よく知らないのです。それなのに「先祖が、そうだったから」と言って、子供や孫に「家の宗教」を強制する。こうした日本の悪い風習が、「二世問題」を余計ややこしくしている、と言えるのです。
これらの混乱した状況下、問題の本質をよく理解しないお子さんから、
「二世問題は悪いことだから、勤行を強制(きょうせい)されたくない」
と言われ、
「ああ、そういうこともあるのかな」
と、私たちの方が弱気になり、法統相続について、遠慮して言えなくなってしまう…。そんな本末転倒の姿となってはなりません。
一方、「日蓮正宗の信心を、すぐには、継(つ)ぎたくない」理由として、「二世問題」を挙げるお子さん方に言わせていただきたいことは、たとえば、学校で暴力事件が発生した。おかしな教師が犯罪を犯した。そんな姿を見て、「学校へは行きたくない」と言うこと。それが果(は)たして、理の通る主張かどうか?。そんな言い分はおかしいと、みなさんもよく分かるはずです。なぜなら、一部の学校で問題が発生した、事件があったからといって、すべての学校が悪い訳ではないからです。
もし、そのように言って登校を嫌がるお子さんがいた場合、親は、まずその理由についてよく話を聞いてあげます。そのうえで、学校へ行くべき理由を説明し、納得させて、そして勇気を出して学校へ行ってごらんなさい、と。学校では、いろんなことを学ぶことができて、それが、あなたの人生に必ず役立つんだと。そのように、子供達とよく話し合っていく…。親ならそうした行動を取るはずです。
信仰も同じです。いい加減な、おかしな宗教が多いからといって、すべての宗教が悪い訳ではないのです。むしろ、間違った教え(謗法(ほうぼう))の恐ろしさを理解したうえで、正しい御本尊を受け継ぐ大事を教えていくことに、どうして遠慮する必要がありましょうか。
繰り返しますが、宗教の“二世問題”は、「間違った宗教」を信じ、それを強制的に子供に継がせようとすることが問題である、ということ。これを、今一度、整理していく必要があるのです。
さて、それでは、南無妙法蓮華経の信仰を子供たちに伝える法統相続は、どのように進めればいいのでしょうか。
お子さんは、我が家の大切な宝ではありますが、親の所有物ではありません。ですから、お子さんの言葉に耳を傾けることなく、ただ「やれやれ」と強制しても、法統相続は、うまくいきません。
では、どうすればいいのか。たとえば
「お父さん、お母さんも、大聖人様の信心で、これからも、立派に生きていけるよう、頑張っていく。だから、あなたも一緒に、お題目を唱えて、頑張っていこう」と励ますのです。
大事なことは、親がまず意識を変えて、自分の子供のことを、“大切な仲間”として尊重するのです。あるいは、時には子供から学ぶこともある、我が子は“人生の師”でもあるんだと。こうした意識をもって、子供たちに接していくことが大切と思います。
最後に
日蓮大聖人は「大悪をこれば大善きたる。すでに大謗法(ほうぼう)国にあり、大正法必ずひろまるべし」(御書796)と教えられています。
世の中では、「二世問題」は宗教界にとって大打撃となる問題、と騒ぎ立てますが、私たちは、むしろこれをきっかけに、宗教には正邪(せいじゃ)の違いがあるということ、そして正法を正しく法統相続していくことが、いかに大事であるかを真剣に話し合い、親子そろって広布の人材として成長していくことができるよう、努めてまいりましょう。