お彼岸とは? 大白法(令和3年8月16日号より)
春分の日と秋分の日を中心に、前後一週間の期間に修する追善(ついぜん)供養(くよう)の法要(ほうよう)を彼岸会(ひがんえ)といいます。
この彼岸会は日本独特の行事です。古くは、聖徳太子の頃から行なわれていたといわれています。時代によって様々な形で行なわれたようですが、今ではお寺に参詣して、先祖供養をすることが習わしとなっています。
皆さんは春季彼岸会と秋季彼岸会の二回、お寺に参詣しますね。日蓮正宗の彼岸会では、御本尊様にご先祖への功徳(くどく)回向(えこう)を願って塔婆(とうば)供養をし、御住職様から御法話をいただきます。
彼岸会は、その時期になれば日蓮正宗以外の寺院でも行ないますが、他宗では、本来の意味は教えてもらえないので、正しい供養はできません。皆さんは正しく知ってくださいね。
彼岸会の意味
彼岸とは、インドの言葉の「パーラミター」に由来(ゆらい)します。この音に「波羅蜜」と漢字が当てられました。「到彼岸」、彼の岸(向こう岸)に渡ると訳します。
幅の広い大きな河が、皆さんの目の前に流れていると想像してみてください。
次に渡井達がいるこちら側の岸(此岸・しがん)から、船に乗って向かい側の岸に渡ることを想像してください。
私たちがいる岸を、仏教では「穢土(えど)」とか「娑婆(しゃば)世界」といいます。穢れた苦しみの世界であると説かれています。そして目の前の大河は、煩悩(ぼんのう)・業(ごう)・苦(苦)の三道(さんどう)という苦しみの根源の譬(たと)えです。乗っていく船は、仏様の教えの譬えです。そして、たどり着く向こう岸を、成仏(じょうぶつ)の境界(きょうがい)に譬えているのです。
安全に渡るには?
さて、安全に向こう岸に渡るために、皆さんだったらどうしますか?
河の流れはふだんは穏(おだ)やかですが、風が強く吹いていて波が高かったり、大雨で水位が上がって危険な時もあります。しかも、泳いで渡るには、たいへん大きな河です。
筏(いかだ)やカヌーのような数人しか乗れない小さな船では危険です。これがもし、たくさんの人が乗れる大きな船だったらどうでしょう。風や波の影響(えいきょう)を受けず、安全に向こう岸にたどり着けますね。
この大きな船について、日蓮大聖人様は
「私が説いた南無妙法蓮華経の教えが大きな船です。この船に乗ると、向こう岸へに行くことができます(趣意)」(御書 350㌻)
と仰せです。
私たちがこの船に乗るということは、大聖人様の正しい教えを信心修行するということです。それによって、苦しみの荒波(あらなみ)があっても、元気に乗り越えて前に進めるのです。さらに
「世の中の人々の心が穢(けが)れていれば、私たちの住む世の中や生活や環境も穢れてしまいます。しかし、心が清ければ世の中も清らかになるのです(趣意)」(御書 46㌻)
とも御指南されています。
“向こう岸に渡る”といっても、どこかよそに、別の幸せな世界があるわけではありません。大聖人様の仏法が世界中に弘まることによって、この世界がそのまま清らかな世界になるのです。
ご先祖の塔婆供養をしよう
お彼岸には塔婆供養をします。塔婆供養は、亡くなった方も供養した人も功徳を戴くことができ、その功徳は計り知れないと、たくさんの経典(きょうてん)に説かれています。
私たちは勤行・唱題に励み、自分自身が大きな功徳を積んでいくことによって、真の追善供養ができます。彼岸会の大切な意味が判ったら、身近なお友達や入信していない家族に、ぜひ教えて差し上げてくださいね。
(塔婆について)
塔婆(とうば)とは、サンスクリット語(古代インドで使われた言葉)の「ストゥーパ」を音訳したものです。卒塔婆とも呼ばれます。
もともとは、仏様や王様のお骨などを埋葬した、御墓の上に土や石をまんじゅう型に盛ったものを指していました。後には、仏様のお骨や経典を納めた仏塔を、さらに、五重塔や木や石で作った供養塔のことも、塔婆と呼ぶようになりました。
そこから、現在のように、故人(亡くなった方)を供養するための木の板を、塔婆と呼ぶようになりました。
板のお塔婆には、角(かど)や丸の形に刻みが入っていて、下から方形(ほうけい・四角)・円形・三角形・半円形・如意(にょい)宝珠(ほうじゅ)をかたどっています。この五つの形は、それぞれ「地水火風空」を意味します。地水火風空の五つをまとめて「五大(ごだい)」と呼びますが、これは、宇宙(うちゅう)法界のすべてを構成(こうせい)する五つの要素のことです。方形は地、円形は水、三角形は火、半円形は風、如意宝珠は空を表します。
この五大について、御書には
「地水火風空は、そのまま妙法蓮華経の五字である(趣意)」(御書1418㌻)
と説かれています。また、塔婆には法華経『法師品第十』の「此中已有 如来全身(此の中には、已に如来の全身有(いま)す)」(大石寺版法華経 327㌻)
との経文が記されます。これは、塔婆が仏様の体を表わすという意味です。つまり、妙法蓮華経の仏様の体に、戒名や故人の名前を書いて、成仏の姿を表わしたのが塔婆です。
このような意義から、塔婆に妙法蓮華経の御題目と戒名をお認(したた)めし、御本尊様のもとで読経・唱題して追善供養(故人の冥福を祈り追って善行を修すること)申し挙げます。
日蓮大聖人様は御書に
「塔婆の功徳により、故人となった父母も、天の太陽や月がその光で照らすように、浄土への道を照らされていることだろう。また、孝養の人であるあなたや妻、子供も、寿命を百二十年に延(の)ばし、後世に父母と共に霊山(りょうぜん)浄土に趣くであろう(趣意)」(御書1424㌻)
と仰せです。正しい塔婆供養の功徳によって故人が成仏ことはもちろん、建立(こんりゅう)した人やその妻子にも、現世(げんぜ)に寿命を長らえる大きな功徳がこたらされるのです。
このように日蓮正宗による正しい塔婆供養は、故人も塔婆を願い出た人にも大きな功徳(くどく)をもたらすのです。
(常盆・常彼岸)
日蓮正宗には「常盆・常彼岸」という言葉があります。これは夏のお盆や春秋のお彼岸の時だけではなく、朝夕の勤行をはじめとする毎日の生活において、常にお盆、お彼岸のように報恩の心、追善供養の気持ちを持ちなさいという教えです。